誇れ、雷鳥

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ルゥは目を瞑った。 「あれ?」 しかし、いつになっても意識が途切れない。おそるおそる目を開ける。 「ったく、急に走り出すなよ。ついて行けねぇじゃねぇか」 「………バド?」 目の前に居たのは帽子を目深に被った男、バドだった。バドが、貴族の腕を掴んで止めている。 「ま、お前が変わったところはしっかり見させてもらったがな」 「つ、次から次へとぉぉ!!!」 再び貴族の怒声。もう狂ったように叫び始めた。 「貴様ら許さん!ただ殺すだけなぞ生温い!その腹を切り開いて腸を引き摺り出して殺してくれる!」 「おい、おっさん。忘れてねぇか?」 バドの雰囲気が変わる。 「何?」 「ここは、『戦場』だぜ?」 そう呟いたと思った途端、バドの肘鉄が貴族の鼻にめり込んだ。 「がっ……!」 折れたのか鼻血を出しながらよろける貴族。その顎に今度は蹴りが突き刺さった。一瞬で昏倒する。 「もう、『目』を隠す必要もねぇな」 帽子を脱ぎ捨てるバド。その目は、吸い込まれるような真っ黒な色をしていた。
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