46127人が本棚に入れています
本棚に追加
レリオはトットを睨み付ける。
「てめぇは赤の他人から理不尽な暴力を受けたことがあるか?」
「何?」
「満足にメシを食えなかったことは?真冬に川で身体を洗ったことは?親に捨てられたことはあんのかよ。オレは、全部あるぞ」
「……………」
「耐え難い苦痛を覚えてきた。今更、オレは死ぬことに何の恐怖も感じない」
「てめぇ……!」
「泥水飲んでから出直してこい、ゲス野郎」
「嘗めた口を、叩くなぁ!!」
トットは腕を振り上げた。死ぬ。レリオはそう確信した。だが。
「お腹!!」
ドロシーの大声がその行動を止めさせた。
「ヘソの少し上の辺り。そこが、わたしの『弱点』だよ」
トットはそれを聞いてニヤリと笑った。攻撃を止める。
「素直で感心した。ドロシーに感謝するんだな」
「姉ちゃん、何で……!」
レリオの絶望した顔にドロシーは微笑んで答えた。
「確かに、レリオくんを見捨てればわたしは生き残れる。でも、それをしちゃったら、それはもうわたしじゃない」
最初のコメントを投稿しよう!