番外編・勇気の無い獅子と桜髪の魔法使い

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この世界は理不尽に出来ている。そんなことは分かっていた。 それでも、小さな幸せを皆で共有してきた。神は、それさえも踏みにじる。 いや、神ではない。人だ。人の中に潜む『悪』だ。それがレリオを襲い、ドロシーを穢した。 正義のヒーローなんてこの世に居ない。なりたいとも思わない。 何故ならば、ドロシーを助けたい気持ちよりトットを殺したいという気持ちの方が強い。 頭蓋を砕き、脳髄をぶちまけて、脊髄を叩き折り、心臓を突き刺し、ハラワタを引きずり出しても、この気持ちは静まらないと断言出来る。 そんなことを考えている人間が、『救う』などと宣えるわけがない。 言うなれば『悪』。チンケな『悪』をも飲み込む『絶対悪』。 欲するは壊す力。何者にも囚われず、他者を支配する『拘束』の力。 こんな世界、要らない。だから全てを壊す。否定する。 『巨悪』となりて、世界の全てを壊しつくさなければ、気がすまない。
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