番外編・勇気の無い獅子と桜髪の魔法使い

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* 雷鳴。そうとしか言えない轟音が教室に響いた。 生物としての本能からか、トットはビクリと身体を震わせる。威圧感を後ろに覚え振り返った。 いや、そんなことをしなくともトットは分かっていた。後ろには一人しか居ないのだから。ただ理解したくなかっただけだ。 「よくも好き勝手やってくれたな……」 落ちこぼれだと思っていた人間が、怪物に化けたのだと。 トットは自然と『魔手』を作っていた。その事実に自分で驚愕している。 恐れている。さっきまでわーわー騒ぐことしか出来なかった子供に。 「動くな!」 トットはドロシーに『鋼』を向ける。人質。 「こいつの命が惜しかったら―」 「殺れよ」 レリオはトットの言葉を遮った。 「殺るなら殺れよ。その方が、動きやすい」 「なっ……!こいつはお前の姉だろうが!」 「ああ。姉ちゃんは大事な人だ。オレが死んでも生きてて欲しい人間だ」 「だったら!」 「だが―」 魔力が暴走している。力に呑まれている。そんな男が吐き捨てた。 「てめぇを殺せるなら、『そんなこと』はどうでもいい」
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