46127人が本棚に入れています
本棚に追加
*
雷鳴。そうとしか言えない轟音が教室に響いた。
生物としての本能からか、トットはビクリと身体を震わせる。威圧感を後ろに覚え振り返った。
いや、そんなことをしなくともトットは分かっていた。後ろには一人しか居ないのだから。ただ理解したくなかっただけだ。
「よくも好き勝手やってくれたな……」
落ちこぼれだと思っていた人間が、怪物に化けたのだと。
トットは自然と『魔手』を作っていた。その事実に自分で驚愕している。
恐れている。さっきまでわーわー騒ぐことしか出来なかった子供に。
「動くな!」
トットはドロシーに『鋼』を向ける。人質。
「こいつの命が惜しかったら―」
「殺れよ」
レリオはトットの言葉を遮った。
「殺るなら殺れよ。その方が、動きやすい」
「なっ……!こいつはお前の姉だろうが!」
「ああ。姉ちゃんは大事な人だ。オレが死んでも生きてて欲しい人間だ」
「だったら!」
「だが―」
魔力が暴走している。力に呑まれている。そんな男が吐き捨てた。
「てめぇを殺せるなら、『そんなこと』はどうでもいい」
最初のコメントを投稿しよう!