飛翔の町

11/67
前へ
/1704ページ
次へ
グリップに木が使われている旧式のボルトアクションライフル。 使い込まれたそれには手垢が残り年季を感じさせるが、手入れはしっかり行き届いており惚れ惚れする。 『武器中毒』のセリスは置き引き犯が持っていたものを見た瞬間にすぐにライフルだと当たりをつけた。 後は身体が勝手に動いた。そうなると視界が狭くなることが欠点である。 一頻りうっとりとした目でライフルを眺めていたセリスだったがやがてそれをまた布で包む。 本来ならばバラして内部の部品が磨耗した跡もじっくり見てみたいものだが、生憎これは盗品だ。 あの老人の持ち物であるのなら返さねばならない。 勿論、バラさせてくれるように交渉するつもりではあるが。 セリスは機嫌良く意気揚々とライフルを背負った。 「そこのあんた」 そんなとき、セリスは声をかけられた。ツナギを着て、無骨そうな顔をした男性に。セリスの返事を待たずに男はこう言った。 「オレの研究を完成させてくれないか?」
/1704ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46125人が本棚に入れています
本棚に追加