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瞬間、空気が重くなった。同時にレリオは理解する。
これは、『死』の重さだと。
「おい、姉ちゃん……」
「ごめん、ね」
「謝んなよ!返事をしろよ!」
すがる声はどこにも掴まれず虚空を切る。
『桜花』は順番に身体を慣らしていく魔法。わざわざそんな手順を踏んでいるのは、踏む必要があるから。
急激な変化に、人間は耐えられない。ドロシーもそれは例外ではない。
「こうなることは、分かってた」
「姉ちゃん……!」
レリオからは見えないがドロシーの身体に異変が起きていた。立てなかったのはそのせい。
身体が赤黒く変色している。全身が内出血を起こしていた。吐血もしていて、目はもう見えていない。
「それでも、レリオくんには生きていて欲しかった」
「ふざけんな!勝ち逃げする気かよ!まだ……まだ、これからだろうが!」
「レリオくん」
顔は見えない。しかし、
「今まで、有り難う、ね」
確かに笑っている。そんな気がした。
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