銃王姫と二丁拳銃

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狂ったように笑いだすニーナ。その目は既に焦点が合っていない。 妄想を支えにして歩いていて、一度はそれが無くなり転んだがまた支えを見つけて立ち上がったニーナの心。 新たな支えをも無くなったニーナの心は、完全に折れた。壊れてしまった。 大切な人が死んでしまった事実よりも、現実の厳しさの滑稽さが大きくなってしまった。 善人は損をする。正義のヒーローなんていやしない。あるのは、悪意が全てを支配するという事実だけ。 テスターの言っていたことは正しかったのだ。それを否定するべきでは無かった。 一人の小娘がいくら喚こうと、世界の事実は何一つ変わらないのだから。 「あはははははは!あーはっはっは!」 喉が潰れそうになるまでニーナは笑った。その目に涙は無かった。 孤高の隼は止まり木を無くし、落ちていく。堕ちていく。 悪意の奔流に。救い様のなくなる暗闇に。ニーナは自ら堕ちていった。
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