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「あんた、汚いよ」
それはオーヴィルがまだ学生だった頃、隣に座った女子に言われたことである。
オーヴィルの通っていた学校は私服学校だったので、オーヴィルはすぐに仕事にとりかかれるようにとツナギを着ていた。
「別に気にしないからいい」
「そんなだらしない格好が視界に入る迷惑を考えて」
オーヴィルはその女の格好を見る。地味だが整えられた学生らしい格好。オーヴィルは鼻で笑う。
「職人の世界を知らねぇ奴に言われても耳が痒いだけだ。嫌ならオレを視界に入れないように努力するんだな」
そう返すと女は呆れたように溜め息をついて、諦めたようにその場を去っていった。
次の休日。女はオーヴィルの職場に訪れていた。超地味なジャージを着て。
「あんたが言う職人の世界っていうのがどういうものか確かめに来た」
オーヴィルは最初に来るだけ無駄だと言ったが、女は頑なに聞こうとしなかった。
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