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「ともかく礼はいらない。わたしにとってはご褒美みたいなものだったからな」
「本当にないのか?」
「ない。強いて言うならば風呂を貸してほしい。オイル臭くて敵わん」
セリスの服は黒い汚れでベタベタである。髪も美しい桃色がくすんでいる。
「それくらいなら全然構わねぇ。スッキリしてこい」
「有り難う」
そしてセリスは風呂場に向かった。一人になってオーヴィルは感慨深くなる。
十数年。初めは素人の状態から始まった『飛行機』がついに形となった。
テスト飛行は出来ない。オーヴィルも地上でしかパイロットの練習をしていない。
どれだけ『飛行機』の出来が良くても、腕は伴っていない。成功確率は二割程度だろう。
しかし、オーヴィルはやる。確率が0でない限り命を賭けて挑戦する。
それが、レベッカをこの世界に引き込んでしまった贖罪となるのだから。
オーヴィルは明日の決行に備えて深い眠りに入った。
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