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ともかく馬鹿げたやり取りで思考する時間は稼げた。
この小さい身体では投げ技は相当勢いをつけないと無理。それこそ相手に跳んでもらうぐらいしてもらわないと。
次に絞め技。これも怪しい。いくら老人になって動きが鈍いとはいえ、相手は軍人。弱い力で落とせないかもしれない。
また、極め技も似たような理由で却下。と、なれば戦略は決まってくる。
ライは投げる為の受けの構えから打つ為の攻めの構えに変える。
例え力がなくとも掌打なら未熟な拳でも砕ける心配がない。
狙うのは脳を揺らせる顎。身長に差がある分厳しいが、今のライが倒すにはそれしかない。
「打撃は好きじゃねぇんだが……」
「なら止めればいいだろう。子供のままの方が可愛いぞ」
「………歳を取ると孫を見る目にでもなんのか?」
敵もそれが分かっているので顎には最大の注意を払っている。
駆け引き。一瞬の隙が全てを決める。二人とも小刻みに動く。そして―
「あ」
ライが自分のズボンを踏んで盛大にコケた。
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