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「少し、昔話をしていいか?」
「お前は昔話って言える程歳食ってないだろ」
「わたしにとっては昔だ」
二人とも手を動かしながら会話をする。
「わたしは父親が嫌いだ」
「父ちゃん泣くぞ」
「昔の話だ。母親に強く出れない優しい父が嫌いだ」
ツンデレか、とここでオーヴィルはセリスの性質を理解する。
「わたしは母親が嫌いだ」
「そうかい」
「西洋好きで力の強い愛情表現をする母親が嫌いだ」
これは割りと本音っぽい。
「そりゃ生きにくかっただろうな」
「ああ。わたしもそう思っていた。強盗に両親が殺されるまではな」
一瞬だけ、オーヴィルの手が止まる。
「……そりゃ災難だったな」
「ああ、驚いた。あんなに嫌いだった両親が死んでくれたのに、わたしは復讐を企んだんだからな」
一方カチャカチャと手を休めないセリス。
「復讐は何も生まない。そんなのはただの綺麗事だ。何も生まないからなんだ?憎しみしか作らないからなんだ?復讐しない理由にはならない」
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