飛翔の町

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「背が低い奴は性欲が強いと言うしな。あのクソビッチはウチの孫娘と違ってどれだけ―」 シモンの言葉が途切れる。シモンは言う相手を間違えた。 確かにチフユは気が荒い。あんなことを言われたらセリスに口が向くのは分かる。 ただ、それでも知っている人間ならセリスに喧嘩を売ることはしない。 チフユは暴力的だが根っこは人間好きである。明確な殺意さえ向けなければ基本手加減する。 セリスは違う。言うなれば瞬間湯沸し器。そして行動力が高い。 男だろうが女だろうが子供だろうが老人だろうが好きだろうが嫌いだろうが関係ない。 言葉よりも先に、思いよりも先に、手が出るのがセリス・サンダーバードなのだから。 シモンにとっての幸運はセリスが今ハンマーを持っていなかったことだろう。 逆に不運は、セリスもツバキのあの技を見ていたこと。 ツバキのように技ありでもなく、チフユのように不完全でもない。ただの力任せ。 結論を上げるならば。セリスの『人体サッカー』でシモンの身体が二メートル程宙に浮いた。
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