飛翔の町

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ミナツの様子をおかしくしたのは屋根から転げ落ちる前なのだが。 「ならチフユに代われ。変な距離感あるよりそっちのがマシだ」 ミナツは黙って目を閉じた。ライの『異端強者』としての感覚がチフユに変わる。 「なーんだ、嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか」 「止めろ、抱き付くな」 チフユは来るなりセリスに後ろから抱き付いた。抱き付きつつも首輪を締める。 セリスの方が背が低いので見た目はかなり危なっかしい。 「何でわたしに抱き付く?」 「そりゃセリスの身体はすっぽりしてて抱き付きやすいからよ」 「『ライが一番乗っかりやすい』と前言ってた。ほら、ライのとこ行け」 セリスが厄介なものを押し付けるように言う。 「あー……わかった」 チフユはセリスから離れる。そしてライの近くまで歩き、きゅっと袖を掴んだ。 「……おい、何だそれは?今更羞恥心でも目覚めたのか?」 「ち、ちげぇよ!」 慌てて否定するチフユ。ライにもその行動の意味が分からなかった。
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