飛翔の町

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オーヴィルは工房にある棚を動かす。すると床に地下へと続く階段があった。 「思ったより簡単なところにあるんだな」 「材料搬入用はまた別にあるがな」 オーヴィルは地下室にまた歩き出す。セリスも続く。 「目的を、聞いてもいいか?」 階段を下りながらセリスはオーヴィルにそう聞いた。 「オレにはよ、カミさんが居たんだ」 オーヴィルはゆっくりと階段を下りながら語る。 「やかましいカミさんだったが、オレは愛していた。いつか子供を作って幸せな家庭を築こうと約束した」 オーヴィルは少し嬉しそうだった。しかし、それから急にトーンが落ちた。 「だが、ある日。カミさんが消えた」 「消えた?」 「死んだんじゃない。消えたんだ。オレが仕事から帰ると夕食の支度をしたままもぬけの殻になってやがった。たった一つのメモを残してな」 「………内容は?」 オーヴィルは懐からメモを取り出した。いつも持ち歩いているからか汚れていたがそこには確かに女性の文字が走り書きで書かれていた。
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