飛翔の町

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「『空に拐われる』?」 「そうだ」 悪戯書きとしか思えない内容。意味が分からない。 「オレのカミさんは嘘はつかねぇ。だからこのメモは暗号でも、比喩でもねぇ」 「なら何だ?」 「『空中都市マチュピチュラ』。オレのカミさんはそこに誘拐された」 「はぁ?」 セリスが珍しく呆けたように驚いた声を出した。 世界でマチュピチュラの名前を知らない人間は居ない。世界中を浮遊しているとされる幻の浮き島だ。 名前だけは知られてるものの目撃情報は皆無。言わば世界で一番有名な都市伝説という代物。 「そんなあるかどうか分からない物の為にお前は『禁忌』を犯すのか?」 「オレも自分自身どうかしてると思う」 オーヴィルとセリスが地下に到達する。そこはかなり広い。魔車の整備場を大きくしたような印象を受ける空間。 「それでも、信じねぇとオレは前に進めねぇんだよ」 その空間の中心には、巨大な鉄の塊。いや、機械。細長い胴体に鋼の翼を生やした機械。 『三大禁忌』で作成を硬く禁じられている、『飛行機』がそこにはあった。
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