飛翔の町

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「それは、体験談か?」 「まぁね」 フロウはベッドから立ち上がる。うんと伸びをした。 「僕は長い間サンダーバード後輩と離れて正解だった。気持ちに区切りがついたし、切れる程柔な絆でも無かったみたいだからね」 「…………」 「ミナツちゃん。あと中にいるチフユちゃん。君達は死んじゃ駄目だよ」 フロウの目は、何かを決意したような目だった。 「さっきも言ったけど、サンダーバード後輩は弱い。おどけたり、嘘はついても自分を騙したりはしない。 自分が生きて大事な人間が死んだりしたら、それこそ丸々受け止める。それが例え自分を壊してしまうとわかっていてもね」 フロウは知っている。ミナツやチフユの知らない過去のライを知っている。 「高校時代は何とか持ち直したけど、今度は駄目かもしれない。だから、死んじゃ駄目だよ」 「まるで……いや、何でもない」 「そう?じゃあ僕は帰るよ。話したいことも話せたしね」 勝手に言うことだけ言ってフロウは部屋から出ていった。 ミナツは言えなかった。フロウの言葉に感じた気配を。あまりにも不吉だったから。
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