飛翔の町

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そんな時、いつも早く動くのはお人好しのライである。次点で人間好きのチフユ。 しかし、今動いたのは違う人物だった。 「預かってろ!」 セリスが、巨大ハンマーを背中から外しチフユに投げ渡した。 チフユが受けとるのを確認もせず、セリスは全速力で走っていった。 「うぉ!」 チフユは驚きつつもそれを受けとる。少しの間呆気にとられたライだったがすぐに持ち直す。 「チフユ!じーさんを頼んだ!」 ライもセリスの背中を追っていった。チフユはその場に残される。 セリスのハンマーを預かってしまった以上、走っても追い付かないのでチフユは大人しくその場に留まることにした。 「災難だったな、じじい」 「こら。年頃の女がそんな汚い言葉を使うな」 「別にオレの勝手だろー。直してほしけりゃ力ずくなら受け付けんぜ?」 「く、あと十年若ければ……」 そう言う老人の体臭をチフユの鼻は敏感にとらえる。
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