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どちらにせよこれでは抜けられない。完全に挟まれた。そこで通信が入る。
『ほれ、意地を見せんと早よう東へ駆けてこい』
ハニバル。『将王』と呼ばれた老人の声だった。
確かに敵は北西と南から来ている。穴が大きいのは東。
それに東ははじめからハニバルが陣取ってる。罠の可能性は薄い。
「貴様、この状況になると分かっていたのか!?」
『分かってはおらん。ただ、想定内ではあった。儂は臆病故にな』
ハニバルは飄々と言い返す。その様子に歯噛みしつつもパルトは指示をした。
「全軍転進!東へ全速力で離脱せよ!撤退する!」
「将ぐ―がっ!」
近くに居た部下が悲鳴を上げる。パルトがそちらを向くと、茶髪の鬼が眼前まで迫っていた。
「ぬぁ!」
首に飛んでくる刃を自身の剣を割り込ませて止める。
しかし、力の差は覆せるものではなく叩き落とされた。
小雨で濡れた地面にパルトは無様に転がる。その様子を見た女は淡々と口を開いた。
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