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スタスタとライは歩行を止めない。
「この戦争、確かに火をつけたのはハルだ。だが、だからと言って最後まで責任は取らなくていい。それは、お前の特権だ」
「ライ……」
「正しさなんて放り投げろ。信用されなくても、汚くても、戦ってくれる奴は全員お前を次の『王』だと認めている」
「でも、それでもわたしは―」
なお食い下がるハルカにライは追い討ちをかけた。
「それでも足りねぇって言うなら一つ、おまじないを教えてやる」
「おまじない?」
「堂々と胸を張って、『嘘』をつくんだ。皆の前で、意気揚々と、前向きな『嘘』をな。そしたら一陣の『神風』やら、優しい『鬼神』やら、無愛想な『武神』が、その『嘘』を許さずに本当にしてくれるだろうよ」
ライは笑う。チフユも。恐らく中のミナツも。
それを見てハルカは、肩の荷が久し振りに降りた。
「……ライ、今からわたし嘘をつくわ」
「どうぞ」
「わたしは、この国の王になる。貴方達も、ついてきなさい」
「………仰せのままに、女王様」
「元からついて行く気だっての」
こうして、『泥まみれの女王』は誕生した。両脇に、二人と一人の『神』を携えて。
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