忍族の暗躍

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フゥはバドの隣に来て顔を洗った。バドは袖で顔を拭う。 「バドってさ。寝る時も、顔を洗う時も帽子被ったままなんだね」 「それがどうした」 「何で?」 「お前な……」 奴隷に対して過去を聞くことはタブーである。あっさり破ってきたフゥにバドは呆れる。 「これは、弟の形見だ」 「弟さん?」 「流行病で死んだ。奴隷にやる医者も薬も無いと主人に見放されてな」 バドは帽子を深くかぶり直した。フゥは同情しない。普段と変わらない目で言う。 「そ。フェアじゃないからわたしも言うね。貴族連中は知ってるけど、わたしは『忍族』なんだ」 「『適応四種族』、か」 「そ。何でも隔世遺伝らしくてさ。急に生まれたもんだから驚いたらしいよ」 「らしい……?」 「だってわたし、両親の顔知らないし。お金になるって分かった途端に人売りに売ったんだってさ。だからわたしは、この身体にどんな血が流れているかも知らない」
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