誇れ、雷鳥

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「『保険』?」 「内部に一人でも味方が居れば、完全に想定外のことが起きようとしていても対処しやすい。スパイの基本だ。それくらいは知ってるだろ?」 ライの言い分は正しい。イリカも分かっている。それでも腑に落ちないのは。 「………何でわたしに言わなかったんですか?」 「イリカとマリーにチェックして貰っているからと言っても万に一つスパイがウチに居る可能性はある。情報は隠すに越したことはない」 「じゃあ!」 納得いかないのは― 「何でミナツさんには話したんですか!?」 ―ただの嫉妬だ。 旅には置いていかれ、その分強くなりたいと願った。 学術的に考え、優れた師に魔法を習い、睡眠時間を削って努力をした。 それでも、望む力は手に入らなかった。ライの周りに集まった人間はイリカよりもずっと天才で、その天才がイリカの何倍以上の時間を研鑽してきた。 成長すれば優れた魔法使いになれる。褒められている筈のそれは、今が大事なイリカにとっては残酷な現実を見せられる言葉だ。
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