誇れ、雷鳥

28/104
前へ
/1704ページ
次へ
「ふぅー……」 ニーナは一旦大きく息を吐いた。普段のニーナに戻っていく。 曖昧な状態。いつでも狙撃に移れるし、その場から走り出すことも出来る。 常に集中しながら集中していない。これが長い間じっと獲物を待ち続けることのできるスナイパーの資質。 殺意を殺し、気配を気取らせず、待つ。待つ。待つ。 「……見つけた!」 ニーナがスコープごしに捉えたのは、『血染めの金色』とミナツかチフユの姿だった。 敵軍隊の最後列に姿を現した。二人で何か話しているようだが聞こえるわけがない。 ニーナはすぐには撃たない。万が一ではあるが替え玉の可能性がある。 確証が無ければ行動には移さない。焦るなと言い聞かせる。圧倒的有利なのはこっちなのだと。 暫く観察して、その機は訪れた。 『金色』から狐耳と狐尾が生える。そして、魔法の準備を始めている。 狐の『狗族』がレジスタンスに二人も居るとは思えない。そして、魔法を使っている間、違う魔法を使えないという原則がある以上、魔法による変装の可能性もない。 そうニーナが頭で考えるよりも早く、機械と化した指が引き金を絞り― 艶やかな『金色』は一発の銃弾によって汚された。
/1704ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46125人が本棚に入れています
本棚に追加