誇れ、雷鳥

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「言うたが?」 「それってつまり……」 「いやはや、最前線に出るなど新兵の時以来やな」 「アホか!」 立場もへったくれなくニーナは元の口調に戻った。 「あんた『将王』でしょ!?指揮官が前線に出るなんて馬鹿でもしないよ!」 「ジアの先々代は一番前を走っとったぞ」 「それは馬鹿だからだよ!」 アレキサンドの祖父、散々な言われようである。 「まぁまぁ、そう興奮するでない。幸い士気は異様に高いし、何とかなろうて」 「そりゃあんたが死んだら士気駄々下がりだからね!?」 「ニーナちゃん」 息を切らせて焦るニーナをハニバルは威厳のある声でピシャリと落ち着かせた。 「ヌシには言っておらんかったが、この戦いもう『既に勝っておる』」 「……はい?」 「この最前線に儂が居ることは『作戦通り』じゃ。敵の指揮官は優秀。故に、儂の術中にハマっておる」 ふざけてはいない。真剣な声。その空気にニーナは思わず息を飲んだ。 「儂の最期の奇策。しっかりと見届けておくれ」
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