誇れ、雷鳥

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つまり、あのハニバルが『撤退』を始めた時こそ好機。 セリスの予想外の行動で勝ちの芽を摘まれればハニバルは必ず撤退する。 相手方の反応を見れば取るべき手段が見えてくる。ここまでこれば詰め将棋だ。 『分かった』 通信が切れる。恐らく士気を高める為に鼓舞でもしているのだろう。 「ふぅ……」 イリカは静かに息を着いた。気付けばどっと汗をかいている。 持ち得る駒で最善とは言えないが有利に勝負を進めている。 しかし、一時も気を抜けない。まだ勝っていない。喜ぶのはハニバルの首を取ってから。 そう気を引き締めてイリカは再び通信を繋いだ。 この時のイリカは気付いていなかった。 既に自分がハニバルの策にどっぷりと浸かっていたことを。 セリスに出した指示が自分達の首を絞めていたことを。 そして、現時点でどうしようもない程に、『詰んで』いたことを。
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