誇れ、雷鳥

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ハニバルはそれを後悔していない。シモンもそうだったのだろう。 しかし、いくらそうだと言っても罪の意識は残る。大量殺人の事実を背負っている。 それについて何かしら罰を受けなければならない。それが軍人としての誇り。 それを、むざむざと生き延びて、隠居して、息子や孫に世話されて幸せに最期まで生きていく? 冗談じゃない。そんな人生、クソ食らえ。 「突撃する者は、儂についてこい」 『……死する時は将軍と共に、それがわたしの誇りであります!』 『何、今なら閻魔様も忙しかろう。儂らのような老いぼれがのんびり逝っても許してくれるじゃろうて』 最終的に撤退軍の二割が突撃を選択した。ハニバルに長く仕えた者や老兵がほとんどであった。 「では、反転。突撃を開始せよ!」 ハニバルの指示で少ない人数が突撃していく。ハニバルも通信機を捨て剣を抜き突撃していった。 『将王』。最も優れた将軍と呼ばれた男の人生は、撤退戦で殿の先陣を切り敵兵を一人切り殺した後、槍に喉を突かれるというあっけない形で幕を下ろした。 しかし、その死に顔を驚く程に安らかだったという。 ハニバル、戦死。
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