誇れ、雷鳥

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戦力を分散させるのは愚策。戦術の基本である。『将王』たるハニバルがそんな愚を犯すとは思えない。 それにあくまでも戦力は互角なのだ。全体的に優勢だったのだから兵を温存していようが現状の数はレジスタンスの方が多い。 その状態であれば十中八九レジスタンスが勝てる。だから追撃を― 「あ………!」 その時、イリカは分かった。分かってしまった。瞬間、顔を青ざめる。 ある。例え敵の数が倍であろうと勝てる策が存在する。そして、今の状況はそれをするのに打ってつけ。 何故気が付かなかった?ハニバルが前線に居たからだ。警戒こそしていたがどうしても目を離せなかった。 そうであるならば最後のハニバルの行動にも説明がつく。 ハニバルを討ち取らせることによってイリカの判断を鈍らせ、散開して逃げる時間を少しでも稼いだ。 つまりこれは、指揮官が死ぬことを前提とした奇策。イリカは掌の上で踊らされていた。
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