誇れ、雷鳥

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一体いつから?そんなもの決まっている。イリカがセリスを西に流した時からだ。 アドリブの動きなのにここまで先を読まれた。指揮官としての格が違いすぎる。 イリカは急いで通信を全隊に繋いだ。 「全隊追撃中止!速やかに中央に集合して下さい!」 『イ、イリカさん?』 『どうしたんですか、急に声を荒くして?』 『敵の数を減らすチャンスだ。退くわけにはいかねーだろ』 返ってくるのは困惑、反論。当然だ。勝ち戦にしか見えないのだから。 「いいから早く!急がなきゃ―」 『………イリカさん』 低い声。ブラウゼルの声だった。 『どうやらもう、手遅れみたいです』 その言葉を皮切りに通信に新しい声が飛び込んできた。 『な、何だありゃ!』 『重装兵だ!』 『一列に並んでやがる!』 「あ、あ……」 手遅れ。そう察してイリカは膝から崩れ落ちる。そして、誰かがその状況を声に出して叫んだ。 『ち、違う!一列じゃない!囲んでやがる!重装兵がオレ達を完全に包囲してやがる!』 包囲殲滅戦。ハニバルの名を世界に知らしめた代表的な戦術であった。
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