誇れ、雷鳥

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「ボス、今は抑えて」 リュートも怒気を含めた顔でそう言った。グレイは奴隷達に教えてやりたかった。 生きるとは逃げることではなく戦うことだと。現状に満足せず新たな繋がりを作ることだと。 現にフリークマンファミリーにも元奴隷の人間も多くいる。グレイはそれが出来るだけの力があった。 しかし、今は無理だ。『時間』が足りない。 死の窮地に陥った人間は今日初めて会った人間の言うことに聞く耳など持たない。 奴隷にとってグレイは自分に向かってくる敵。そんな相手に、心を開く筈がない。 『ハルカよ。こっちの部隊はちょっと進行が遅いわ。若干、兵をそっちに回せるけどどう?』 通信が入る。グレイは正直に言った。 「無理だ。イリカには申し訳ないが、オレ達の完敗だ」 『……後ろにライが居ても?』 「あいつがどうにか出来るなら、もう前線に出てきてる筈だ。来ねぇってことは、撤退の準備でもしてるんだと思うぜ」
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