誇れ、雷鳥

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* 奴隷の一員、ルゥは絶望していた。下級貴族の人間が命じたことはたった一つ。 『前線に出て、抵抗せず殺されろ』 武器すら持たされず敵軍の攻撃を受け入れるだけ。要するにただの盾だ。 今も同じ苦痛を経験した、言わば戦友とも呼べる人間が殺されている。 「おら、早く前に出やがれ!」 レジスタンスにではなく、下級貴族に殺されている人間の方が多い。 ルゥ自身、悔しくないわけでは無い。そんなもの、ここにいる奴隷全てがそう思っているだろう。 しかし、幼い頃から植え付けられた恐怖は消えない。 名前で呼ばれず、姓を与えられず、残飯を食らい、殴られ、蹴られ、歯が何本か折れた。 それでも、笑って地面を舐めることがルゥには出来てしまう。 反逆をする為の牙は無い。折られる以前に、生み出すことさえ許されなかった。 「ルゥ、大丈夫か?」 「無理はするなよ」 同じ班のドグとバドが気にかけている。ルゥはコクリと頷いた。
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