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俺は歌い終わった後、椅子に座った。
「……」
鬼塚さんは拍手や俺にお礼を言わないで、ただ天井を見ていた。
「お…鬼塚さん!?」
「おっ!!……よかったよ!!」
「ありがとうございます」
俺は頭を下げた。
俺は喉を潤すため缶コーヒーを一口飲んだ。
暫くして…
「まさお……今日は、ありがとう」
鬼塚さんが俺に頭を下げてお礼を言った。
「そ…そんな頭を下げられるようなこと俺はしていませんよ!!」
俺は右手を左右に振りながら言った。
「…まさお…俺の彼女の…瑠美(るみ)のこと覚えているか?」
「はい!覚えています!!」
「……先月、瑠美が出て行ったんだ!!」
「え!?」
俺は驚いた。あんなに仲良かった2人が別れたからだ。
「…先月、家に帰ると、テーブルに手紙が置いてあってよ。
手紙には
さよなら
って書いてあったんだ」
「……」
「俺はその日、瑠美を探した。瑠美が行きそうな所を全部探した……けど、見つからなかった。それから、俺は1週間瑠美を探し続けたが、見つからなかった」
「…」
「俺は瑠美を探すのを止めて、路上で歌った。……歌えば俺の歌声を聴いて、瑠美が戻って来るかもしれんと思ったからだ」
「……」
「…だけど、いつも通りに歌えなかった。どんなに頑張って、集中して歌ってもダメだった。……俺はスランプに陥ったと思った」
「…」
「……俺はスランプの原因がわからなかった。いろいろ悩んで、漸くスランプの原因が1週間前にわかった」
「ス…スランプの原因って……」
「瑠美だ!!」
「え!?」
「……俺は路上で歌うとき、瑠美に手伝ってもらっていた。…観客からヤジを飛ばされた時や心が折れそうになった時、いつも瑠美がいてくれた。……そして…励ましてくれた」
「…」
「そして…1人スランプで悩んでいた時、わかったんだ。……俺には…瑠美が必要だってことを……」
「……」
「…まさお…俺、今日お前の歌を聴いて決心した!」
「え!?」
「…俺は……瑠美を真剣に探す旅に出ようと思う。……それで、まさお!お前に頼みがある!!」
「!?」
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