166人が本棚に入れています
本棚に追加
第8話
マンションの部屋の中、張り詰めた空気が僕たちを覆う。
岡野(やっぱり、気づかれたんだ……)
喜多嶋さんに、ここを出て一人暮らしを始めるように言われて、まっさきにそれを思った。
岡野(僕の喜多嶋さんへの気持ちを気付かれて……でも、それは社長にとっては不本意なことで……)
たぶん、このまま距離を置こうってことなんだろう。
喜多嶋「ヒロ……」
あまりに、僕がうろたえるから、心配そうに声をかけられた。
ゆっくりと伸ばされる腕。
ひろげられる大きな手のひら……。
岡野(いつも僕を落ちつかせてくれて、安心させてくれて……。でも、今は……)
「わかりました」
ひくっと体を引いた。
一生懸命に笑顔を作る。
最初のコメントを投稿しよう!