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岡野「喜多嶋……さん」
僕から少し体を離して、喜多嶋さんは体から力を抜いた。
岡野(ほっとしたというよりは、落ち着いたような……)
鷲見「いいか?ちゃんと、ふたりっきりで話せよ」
急に鷲見社長の顔が、真顔になる。
さっきまでのふざけた感じから、声のトーンも少し落ちた。
鷲見「このままじゃ、お前の大事な豆ヒロは、誤解したまま出て行くことになるぜ。それは、本意じゃないだろ?」
喜多嶋「っ」
鷲見「お前の目的は、豆を傷つけないことだろ?」
ハッとした顔で、喜多嶋さんが僕を見る。
鷲見「よし!じゃあな。俺の役目は、ここまでだ」
軽く手をあげて、鷲見社長は部屋から出ていった。
残されたのは、僕と喜多嶋さんのふたりで……。
お互いを見ながら、なにから切り出していいのかと、伺っている。
ひどく緊張した時間……。
喜多嶋「ヒロ……気軽に、あいつに……俺以外には指1本、触らせるなよ」
岡野「す、すみません。でも、あれは鷲見社長が強引で」
喜多嶋「それでもだ。そうじゃないと、俺が心穏やかじゃなくなる」
きっぱりと言い切る喜多嶋さんの瞳が、なにか言いたげに少し揺れていた。
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