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キョウとタカ兄が先に出ると、「ヤマト、鍵」と、お母さんが投げる。
あたしは履き慣れないパンプスにつま先をいれる。
これが大人の階段を上るってことだ。
ヤマ兄は「アサは、絶対転ぶ」と、予言めいたことを言いながら待っていた。
よし、と、立ち上がり、ぐらぐらふらつきながら踏み出すと、ヒールがドア下の溝に引っかかり、転びそうになる。
その腕をぐっと捕まえられ、半開きのドアを背に、そのまま抱き寄せられた。
パンプスは結局、両方脱げてしまってどうしようもない。
びっくりして声を発せられないでいると、
ヤマ兄は、あたしに遠慮がちなキスをした。
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