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(………よし!夏焼さんに食べてもらう作戦は考えた!!)
俺はいつもより、上機嫌で階段を降りる足取りが軽やかだった。
いつも朝からおふくろとは話さずに食べている朝ごはんだけど、この時は軽い冗談を混じりながらたわいもない話をした。
「あんた、今日おかしいよ!」
おふくろが俺のことを不思議がった。それくらい俺の様子はご機嫌に見えていた。
俺は洗面所に行き、いつもより入念に歯磨きをし、寝癖でピンと立ってる髪の毛をワックスで整えた。
(今日は決める!!)
鏡に映った自分の顔を見て気合いをいれた。
玄関で腰を掛け、靴を履きながら考えた。
(……今日から夏焼さんは俺の彼女かー)
俺は笑みを浮かべながらいつもより早く家を出た。
俺の腕時計は午前7時31分だった。
いつも通り通学路を歩いていると、前にある電柱に背中を向けて誰かを待ってる女子高生がいた。その女子高生は下を向いていて、どこか自信が無さそうに見えた。
その女の子は俺を見ると、探していた人を見つけたように手を俺に振ってきた。
(ん?あいか?何であんなとこに……)
手を振ってきたのは幼なじみの大前愛だった。
「おはよう!」
俺はあいさつ代わりに右手を挙げた。
「久しぶり、たかちゃん元気?」
「ああ。」
俺は素っ気ない感じで返事した。
「たかちゃんって中央高校に行ってたんだ。たしか、みよと一緒だよね?」
「ああ……」
俺はまた適当に返事した。
……
一瞬話しに間が空いたので
「遅刻するから、先行くわ!!」
っと愛に言って、その場を立ち去ろうとした。俺は愛と話しているより、早く夏焼さんに最中を食べさせて、彼女にしたかった。
「待ってよ!一緒に学校行こう。」
愛は俺の制服の腕の裾を掴んだ。
「なんでだよ!?俺は忙しいんだ!それに、俺と高校違うだろ?一緒に学校なんか行けないだろ!!」
俺は愛の事をうっとしく思い、今すぐ愛から離れたかった。なぜなら、愛と二人で歩いている所を夏焼さんに見られて勘違いされるのが嫌だったからだ。
「……そう。私は東中央女子高校です。けど、東中央女子高校なら中央高校に近いから大丈夫!ねえ?たかちゃん一緒に行こう?」
愛はしつこく、俺の制服の腕の裾を離そうとしなかった。
「あのな~子供じゃないんだし……。高校が近いから一緒に行くとかじゃなく……」
とにかく俺は何でもいいから、愛から逃げようと必死だった。
俺の腕時計の時計は午前7時36分だった。
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