愛のバスクリン

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小学5年生の時、愛と愛のお母さんが、俺の家に来たことがあった。 その日、俺は朝からそわそわしていた。 いつもは仲の良い男友達数人とテレビゲームしたり、カードゲームしたり、わちゃわちゃ遊んでいた。 だけど、この日は女の子の愛がお母さんと来る。愛は小さい頃、よくお互いの家を行き来するくらい仲良かった。でも、だんだん大きくなって、仲良い女の子でもなんか恥ずかしくなっていった。 別に愛を意識してるとかじゃなく、なんとなく…………。 愛の親子が来る数分前におふくろは 「あ!最中、最中!!」 っと言い、リビングのテーブルにある丸い器に最中を9個取り出していれた。 昼の2時が過ぎたくらいに二人は来た。 「たかちゃん!こんにちは!!」 「おっおう!」 「入っていい?」 「おう!」 俺は最初「おう」しか言ってなかった。 二人が来て早々に……。 「この最中、美味しいって有名なの!食べて!」 おふくろがそう言って、愛と愛のお母さんに勧めた。 「いいの?ありがとうございます!!」 愛のお母さんは自分の分と愛の分を取り、愛に一つ最中を渡した。 「たかちゃん。食べていい?」 「おう!」 愛は嬉しそうに最中を一つ食べた。 俺も最中を一つ食べた。 ちょっと緊張していたせいか味は甘いしかわからなかった。 それから、談笑した後 「あっ!大前さんに見せたいものがあるの!!こっち来て」 「なに~?」 おふくろは見せたいものがあったので、愛のお母さんを自分の部屋に連れていった。 ……… リビングには俺と愛の2人だけになった。 ゴク 俺はおふくろが入れてくれた暖かい緑茶を少し飲んだ。 愛に何を話せば言いかわからなかった。 いつも学校でなら昨日の歌番組見たとかお笑い番組見たとか男友達に聞けるのになぜか愛には聞けなかった。 そしてもんもんとしながら、最中を食べようと最中が入っていた器を見た。 ……残り1個だった。 俺は最後の1個を食べようと最中を取ろうとした。 その時 愛が俺より先に最中を掴んだ。俺は愛の手を最中と間違えて触った。 「あ……」 俺は思わず声を出した。 「こ…この最中は愛のだよ!!」 愛は最中を手に取った。 ……少し、顔が赤くなっていたように見えた。 「俺、1個しか食べてないんだ!……愛は何個食べた?」 「……5個だよ……」 「5個!?食べすぎ!!俺にくれよ?」 「い~や!!愛は最中好きなんだもん!」 「最中返せよ~!」 俺は立ち上がり、愛から最中を取り上げようとした。 その時、俺は愛の手や腕に触れた。 「あ……」 さっき、触れた時よりも愛の顔が赤く見えた。 「た……たかちゃん!は……半分個しよ?ねぇ?いいでしょ?」 「……わ…わかったよ。」 俺はこの時の愛の顔が可愛く思えて、思わず頷いた。 すると、愛は何を思ったのか最中を半分食べた。 そして 「はい、たかちゃん!半分あげる?」 っと、半分食べた最中を渡してきた。 俺は思わず、え?っと思いながら 「愛……なんで最中、割らずに半分食べた?」 っと愛に不思議そうな感じで聞いた。 「あっ!割ったら、ポロポロこぼれると思ったの!!だから、愛が半分食べたの!!ダメだったかな?」 「……そうか!いいよ!」 俺は愛から答えに納得し、半分の最中を受け取り、その最中を一口で食べた。 「……美味しい?」 「美味しいよ!!」 「よかった~!あっ!!」 愛は何かを思い出したかのようにカバンから何かを探し始めた。 「あった!」 愛はカバンから小さな箱を取り出した。 「今度、愛の家に来る時、この箱に最中を入れて持って来て!たかちゃん!!」 「……小さくて最中一つしか入らないよ!」 「いいの!!また、たかちゃんと半分こして食べたいから。」 「……はいはい!」 ……この時、俺は愛のことを物凄くわがままな女の子だと思った。今となってはいい思い出だ。 ……愛は次の日もそのまた次の日もあの電柱にはいなかった。結局、愛と会ったのは、1週間の内、月曜日だけだった。 愛の知り合いに連絡を取り、愛がどうしてるか聞こうか、直接家に行こうか考えたけど、どうせ愛のことがだから、またひょっこり元気よく現れるだろうと思って深く考えないようにした。
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