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「でも……?」
先生は優しく微笑みながら私の言葉を待ってくれた。
私は1つ大きく深呼吸をして少しずつ言葉を吐き出していった。
「もし……来年私がM大に入れたとしても彼と同級生ではないでしょう?
私は彼と一緒に走り出したかったのに周回遅れになったから、ずっと彼の背中を追わなくちゃいけないんですよ。
それって辛いと思うんです。
悔しいとか寂しいとか色んな気持ちがごちゃごちゃになって苦しいと思う……。
だから私は絶対に今年一緒に受からなきゃいけなかったんです。
何で落ちちゃったんだろう?
一緒にスタートしたかったのに……」
鼻を啜りながらゆっくり話終わった私の肩にポンと先生の手が置かれる。
「それでもいいじゃん。来年も目指せば」
笑いながら軽く体を揺すられた。
「そんなに難しく考えなくてもさ。
1年違いだろうが同じ大学で楽しくやればいいじゃない。
好きな人がいてやりたい勉強ができる大学なんて最高だと思うけど」
「そんな簡単に……」
「簡単なことだよ。町田さんが勝手に難しくしてるだけ。
そんなことで彼と別れちゃったんならさっさとよりを戻す。
それで気持ちをスッキリさせたらM大目指す。
来年合格すれば全て丸く収まってシャンシャンだよ」
「シャンシャン……って」
ポカンとする私の肩をもう一度ポンと叩いて先生はにかっと今までで一番明るい笑顔をみせた。
「ゴチャゴチャ考えすぎると大切なこと見失うぞ?
今の町田さんがしなくてはいけないのは……」
一旦言葉を切った先生は私の前に人差し指をたててゆっくり言った。
「自分にとって大切なものを見極めること」
その一言に私は目が覚めるような気持ちになった。
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