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それなのに私だけ大学に落ちてしまったから。
また同じような時間を過ごさなくちゃいけないんだと思ったら目の前が真っ暗になった。
約束を守れなかったからそばにいる資格がないとか尤もらしい言い訳をして、私はダイスケから逃げた。
一緒に歩くことができないのにそばにいることは想像するだけで苦しくて、私はこのままダイスケといる自信が持てなかった。
なんて自分勝手な……。
自分自身の行動に呆れて嘲笑がもれる。
そして、それはすぐにため息に変わった。
…………ダイスケに謝ろう。
謝って自分の気持ちを正直に話そう。
バックからスマホを取り出して、ダイスケにLINEメッセージを送信した。
"もう一度会って話したいです"
自分から一方的に離れておいて勝手すぎるメッセージだと思ったが、これ以外の文章が浮かばなかった。
電車が夢愛学園の最寄り駅に到着して見慣れた制服の女の子達が何人も乗車してくる。
紺のブレザーに赤いチェックのスカート。
この辺りの女子中学生が憧れる制服は確かに洗練されていて可愛らしい。
女の子達は全員その制服を堂々と着こなして明るい笑顔を見せあっていた。
私もあんな風に過ごせば良かったと心から思う。
進学を後悔して下ばかり向いていた私はあの制服の魅力を半減させていたに違いない。
高校生活には楽しいことがいっぱいあったはずなのにそれもちゃんと楽しめていなかったと思う。
今度はちゃんと楽しみたい。
有意義な学校生活を送りたい。
大学は私が通う最後の学校だ。
悔いのない選択をしなくてはいけない。
明るく弾けまくっている後輩たちの姿を眺めながらそんなことを考えていたら手にしていたスマホがブルルと震えた。
" 今どこ? "
" 帰宅途中で下り電車の中。後2駅で着くけど "
" 僕も下り電車の中。後4つ。それじゃあ、降りたらいつものとこで待ってて "
" 分かった。ありがとう "
シャンシャン……シャンシャン……。
頭の中で拍手の音が更に大きくなった。
簡単に手うちできるなんて思ってないけど、ダイスケとちゃんと話そうと心に固く誓った。
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