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駅前の大きな噴水広場。
入り口から右手側。
3時の位置にあるベンチが私たちのいつもの場所。
ベンチが空いてなかったらその位置で噴水の縁に腰掛けて待つ。
それが高校時代、私たちの決めたルール。
放課後の待ち合わせには高校が遠い私の方が遅れてしまうことが多くて、いつもダイスケはベンチで本を読みながら待っていてくれた。
今日は私がダイスケを待つ。
幸いベンチが空いていたので私は浅く腰掛けて背筋を伸ばした。
すっかり春らしくなった生ぬるい風が頬を撫でる。
広場の隅に植えられている1本だけの桜はちょうど満開で、その前で写真を撮っているのはダイスケと同じ高校の制服を着たカップルだった。
1年前と2年前。
私とダイスケも同じようにあの桜の木の下で写真を撮ったことを思い出す。
思い出したとたん胸がギュッと痛くなった。
ダイスケが来てくれたら何から話そう?
そんなことを考えていたら時間はあっという間に過ぎた。
広場の入り口から小走りに私のいるベンチに向かってくる細長い人影が見える。
だんだん近づいてくるダイスケは、待っている私と目が合うと息を切らしながら走り寄ってきてくれた。
「カナ……」
「ダイスケ……」
2週間ぶりの再会だった。
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