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浪人生としての1年を私は地元ではなく東京の有名予備校に通うことに決めた。
これ以上の失敗は許されないからと通学を懇願した私に両親はなかなか賛同してくれなかった。
特にママは私が浪人することに大反対だった。
「滑り止めに受かってるのだからそっちに行きなさい。
女の子が浪人したっていいことないわ」
「私はやっぱり志望校を諦めたくないの。
どうしてもM大かM大と同じレベルの大学に行きたい。
滑り止めじゃ納得できないの」
「浪人して来年は受かるなんて保証はないのよ?」
「絶対今度こそ受かってみせるから。
……お願い。
大学進学は私の好きにさせてよ」
最後の一言は私の切り札だった。
私が進学のことで親と揉めるのはこれが初めてじゃない。
高校進学の時も共学の公立校に進みたいと言う私と自分の母校である私立の女子校に進んで欲しいというママは衝突した。
結局その時は『どうしても同じ制服を着た娘が見たい』というママの熱意に私が折れて私立に進んだ。
ママの夢を叶えてあげたい気持ちになってそう決めたのは私自身だ。
それなのに今になってあの頃のことを恩着せがましく口にする自分にとことん嫌気がさした。
だけど、その一言が決め手になってママは私が浪人することを認めてくれた。
来年こそ私は志望校に合格する。
固く固く心に誓う。
もうダイスケとは終わってしまったけれど、後に彼に失望されるような人間にはなりたくなかった。
そのために私は彼と同じかそれ以上の大学に行かなくてはいけない。
彼と同じか……それ以上。
まだ志望校については何も考えられないけれど、とにかく少しでもいい大学に行きたかった。
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