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「えっと……。今年落ちた本命に来年もすがるのは何か嫌で。
もっと上を目指したいっていうか。
ーーーそれにあの大学には元カレが通ってますし……」
何だか一緒にいるうちにリラックスしてしまった私は自然にポロリと言わなくてもいいことまで口にしていた。
「やっぱりね。 そんなとこだと思った。
最後のが本音でしょ?」
先生は私の方に顔も向けず、床を見たままクスクスと笑う。
「笑わないでくださいよ。ひどくないですか?
私は大真面目に言ってるのに」
「馬鹿言ってんじゃないよ。
もし、それが本気だったら大学受験なんてやめちゃいな」
こちらを向いて投げつけられた先生の言葉が私の胸を抉る。
また涙が滲みそうになった。
「町田さんさぁ、今年M大受けたのは彼氏が一緒だからってだけなの?」
覗き込むように訊ねられて、私は顔を背けながらボソボソと答える。
「違います。それだけじゃ……ない」
「でしょ? あそこは教授陣もカリキュラムも個性的だから」
先生の言う通りだ。
M大は他の大学に比べて非常に個性的でそこでしか学べない講義がいくつもある。
興味を持った学科は違ったけど、私もダイスケもM大に惹かれる講義と教授がいてそこを目指した。
「あそこを目指してた子は浪人しても必ずって言っていいほど再チャレンジするんだ。
それだけ魅力的な大学なんだろうね。
実際、俺も最後まで進学悩んだ学校だし」
大政先生と同じ大学って言ってたから日吉先生はY大だと思う。
Y大はM大とレベルは拮抗しているが教育学部に力を入れている大学だ。
「1度目指した学校を失恋ごときで諦めるなよ。勿体ない」
「でもっっ!」
泣きはらした目で私は必死に訴えようとした。
だけどそれ以上の言葉がなかなか出てこない。
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