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常務は何か言いたげな感じだったけど
それを喉元で堪え、
言葉を飲み込んだようだった。
和也さんが帰ってくるまでの間でならいい、という
あたしのズルイ真意を見抜いたかもしれない。
「――それで、いい」
承諾をもらえて、あたしは軽く吐息を漏らす。
…と、あれ?
常務があたしのカバンを持った。
「送っていこう、上着、着て」
「え? いえ、電車で帰れますから大丈夫です」
「その格好で?」
まじまじとあたしを見る常務を不思議に思いながら
近くにあるスタンドミラーの中を見た。
……そうでした。
髪はぼさぼさ、
顔の化粧はとれとれ、
スカートはしわくちゃ。
極めつけは、
濃いキスマークが首元にまで…ある。
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