第6話

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常務は何か言いたげな感じだったけど それを喉元で堪え、 言葉を飲み込んだようだった。 和也さんが帰ってくるまでの間でならいい、という あたしのズルイ真意を見抜いたかもしれない。 「――それで、いい」 承諾をもらえて、あたしは軽く吐息を漏らす。 …と、あれ? 常務があたしのカバンを持った。 「送っていこう、上着、着て」 「え? いえ、電車で帰れますから大丈夫です」 「その格好で?」 まじまじとあたしを見る常務を不思議に思いながら 近くにあるスタンドミラーの中を見た。 ……そうでした。 髪はぼさぼさ、 顔の化粧はとれとれ、 スカートはしわくちゃ。   極めつけは、 濃いキスマークが首元にまで…ある。
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