第一章 ミロダクトの村

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祠である洞窟の入り口は、一見して大岩が塞いでいるように見えるが、実は、手前にある直径2メートル程の平らな石をスライドさせると、地下の階段から中へ入れるようになっている。 去年祭りをこっそり見ていたので、自分がやるのは初めてだが、入り方は知っていた。 入り口を開くと、ライアンが驚きのあまり目を見開く。 リーネも子ども扱いされたくないのか、行く気満々で俺を見上げていた。 俺も入るのは初めてだから、微かな緊張と、わくわくする気持ちを感じる。 だって、今やっていることだって、勇者の冒険みたいだし。 「よし、行くか!」 ポケットに入れていたライターに火を点けると、俺、リーネ、ライアンの順でゆっくりと階段を降りて言ったのだった。 通路にある松明に火を点けながら進んで行くと、以前に聞いていた通り、程なくして開けた場所が現れた。 そこは、その場所自体が淡い赤の光を放ち、ライターの火が必要ないくらい明るかった。 「すっげえ……。」 ライアンは口をあんぐりと開けたままあたりを見渡す。 確かにすごい。幻想的な景色に魅入られた俺たちは、無我夢中であちこちを探索する。 この空間を囲む岩石は淡い光を放つだけではなく、宝石も含んでいるようだ。 所々、キラリと光る石が見えた。 持って帰ったら、母さんが喜ぶかな。 そんなことを考えていた時、けたたましい悲鳴が聞こえた。 「どうした……って、リーネ!?」 慌てて振り返ると、そこには覆面で口元を隠した男がいた。 リーネを腕に抱きかかえ、その喉元にダガーナイフを翳している。 その男は前髪が片方だけ長く、右目が隠されていたが、鋭い光を放つ左目は俺を見据えていた。 突然のことにどうしてよいかわからず、俺はただただ驚くことしか出来なかった。
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