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祠である洞窟の入り口は、一見して大岩が塞いでいるように見えるが、実は、手前にある直径2メートル程の平らな石をスライドさせると、地下の階段から中へ入れるようになっている。
去年祭りをこっそり見ていたので、自分がやるのは初めてだが、入り方は知っていた。
入り口を開くと、ライアンが驚きのあまり目を見開く。
リーネも子ども扱いされたくないのか、行く気満々で俺を見上げていた。
俺も入るのは初めてだから、微かな緊張と、わくわくする気持ちを感じる。
だって、今やっていることだって、勇者の冒険みたいだし。
「よし、行くか!」
ポケットに入れていたライターに火を点けると、俺、リーネ、ライアンの順でゆっくりと階段を降りて言ったのだった。
通路にある松明に火を点けながら進んで行くと、以前に聞いていた通り、程なくして開けた場所が現れた。
そこは、その場所自体が淡い赤の光を放ち、ライターの火が必要ないくらい明るかった。
「すっげえ……。」
ライアンは口をあんぐりと開けたままあたりを見渡す。
確かにすごい。幻想的な景色に魅入られた俺たちは、無我夢中であちこちを探索する。
この空間を囲む岩石は淡い光を放つだけではなく、宝石も含んでいるようだ。
所々、キラリと光る石が見えた。
持って帰ったら、母さんが喜ぶかな。
そんなことを考えていた時、けたたましい悲鳴が聞こえた。
「どうした……って、リーネ!?」
慌てて振り返ると、そこには覆面で口元を隠した男がいた。
リーネを腕に抱きかかえ、その喉元にダガーナイフを翳している。
その男は前髪が片方だけ長く、右目が隠されていたが、鋭い光を放つ左目は俺を見据えていた。
突然のことにどうしてよいかわからず、俺はただただ驚くことしか出来なかった。
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