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初めて向けられた殺意に戸惑うばかりでなく、『死』という単語だけが頭の中を占めていた。
「痛って!」
俺が呆然としていた間に、リーネが男のグルグルと包帯で巻かれた腕を噛んだのだった。突然の痛みに驚いた彼は、リーネを地面に振り払う。
今がチャンスだ!!
そう思った俺は、すかさず木刀をベルトから抜いて跳び上がると、覆面の男にありったけの力をこめて振り下ろした。
しかし、自分なりに全力で振ったつもりなのに、男はいとも簡単に木刀を片手で受け止めた。
「え、マジ?」
俺がそう呟いた時、男は俺から木刀を奪い取り、俺の腹部に強い蹴りを入れた。
そのため俺は祭壇まで吹っ飛ばされ、背中を強く打ちつける。
「…っ!」
鈍い痛みを感じる背中を擦りながら思った。
…今のままでは絶対に勝てない。
このままでは、リーネもライアンも殺されてしまう!
今もなお、男はダガーを片手にリーネとライアンをゆっくりと追いつめようとしている。
…助けなきゃ!!
でも、どうやって?
よろけながら立ち上がると、祭壇の剣が視界に入る。これが、よくわからないが神の剣というならば……。
ライアンとリーネを救えるはず!!
村人たちが祀りたてる剣という事には一抹の不安を感じるが、今の状況ではそうも言っていられない。
俺は覚悟を決め、ただ二人を助けたい一心で剣の取っ手を掴んだ。
その瞬間、剣を縛っていた鎖が次々と弾けるように消える。
ライアンとリーネは二人で固まって震えていて、男が今にも斬りつけようとしているように見えた。
まずい!
『大事な人を救うために、この悪い奴を倒したい!』
そう思いながら、俺は鞘から剣を一気に引き抜いた。
すると、鞘を投げ放つと同時に剣先から刀身にかけて、紅蓮の炎が灯る。
な、何これ!?
しかも、炎の勢いは止まることはなく、そのまま右腕まで呑み込もうとしているかのようだった。
「熱っ…!」
だがもう時間がない。俺は顔をしかめながら力が入るよう両手で柄を握りしめると、覆面の男に背後から駆け寄り、再び斬りかかった。
男は振り返った瞬間、驚いたように目を見開いた。
彼に掠りさえすれば、少しでも炎に怖気づいてくれれば…。
身を焼かれる熱さを感じていた俺は、それを期待してやみくもに剣を振るので精いっぱいだった。
そして、振り切った瞬間、
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