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「……?」
俺がうっすらと瞼を開けると、その途端に太陽の眩しい光が目に染みた。
眩しっ。光を遮ろうと手をかざす。
!?
だが、その手は手のひらから肘にかけて、白い包帯が巻かれていた。
それを見て、昨夜の事が甦る。
――――そうか、俺はあの時剣を抜いて……。そこで意識を失ったんだ。
ゆっくりと起き上がると、俺は妙な状況に気づいた。
「あれ?」
俺は寝ぼけたまま座りなおす。
今まで寝ていた場所は、戦闘をした洞窟でもなく、助けられたはずなのに、自分のベッドでもない。村の集会所の真ん中の地面にござを敷いて、そこに寝かされていたみたいだ。横にはあの時に抜いた剣が置かれている。
それを見て、俺は焦った。
「リーネ! ライアンも! 大丈夫なのか!?」
近くに二人の姿が見えないことに恐怖を感じた。
まさか……俺のせいで、炎に呑まれて死んでしまっていたら……。最悪の事態を考えると、背中に寒気を感じる。
しかも、近くには誰もおらず、遠巻きに村人達が怯えながら俺を見ていた。
「おい、起きたぞ」
「早速、村長を呼んで来よう」
昨日まで親しかった村人たちが、ひそひそと声を潜めながら話す。
「なあ、ライアンとリーネは無事なのか? お母さんは? どこにいるか知らない?」
俺が立ち上がると、彼らは数歩程俺から離れる。そして、誰も問いには答えてくれない。その状況に俺の不安はますます膨らんだ。
「なあ! 誰か答えてくれよ! ……勝手に祠へ行ってごめんなさい。もう勝手に村は抜け出さないから、手伝いもするから。だから……許してくれよ!!」
いつもなら、叱ってくれたり、優しくしてくれたりする、家族のような人達だったのに。今は何一つ俺を咎めることもなく、ただただ見つめている。
「なんで誰も何も言ってくれないんだよ? どうして!?」
まるで何か異物でも見るような視線に耐えかねた俺は大声を出したが、村人は気まずそうに顔を見合わせるだけだ。
「……静かになさい」
村人をかき分けて目の前に現れたのは、長いひげを生やした村長だった。
杖を突きながら、俺の近くへゆっくりと歩み寄る。
「村長っ!!」
俺はやっと話を聞いてもらえそうな相手が現れた嬉しさに、村長の元へと駆け寄った。
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