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村長に杖で殴られたので、俺はその痛みに頭を抱える。
「この紋章を持った者は皆やがて、剣に心を喰われてしまうのだぞ!!その身が朽ち果てるまで殺戮を繰り返す。つまり、お前がお前でなくなってしまうのだぞ!」
村長に怒鳴られたその言葉に、俺は事の重大さを思い知ったのだった。
そうか…だから村人達は俺から離れていたんだ。周りの村人の怯えたような目を見ると急に寂しさが込み上げる。
「つまり村長や村のみんなは、俺がみんなを皆殺しにして、村を滅ぼしてしまうって考えているんだな?」
確認を取ると、村長は頷いた。
だがその時だった。
「何を馬鹿な事を言っているの!!」
迫力のある母さんの声が村の広場に響いた。人垣をぐいぐいとかき分け、村長を突き飛ばして俺をきつく抱きしめる。
「あんた…何てことをしたんだい!?業火の剣を抜くなんて!」
俺を抱きしめたまま、母さんは俺を叱る。
すごい剣幕で迫られたため、俺は肩を竦ませた。
「ご、ごめんなさい。」
しかし、母さんはゆっくりと息を吐き出すと、俺の頭をなでる。
「謝らなくていい。アレク…あんたはいい子だよ。
話は二人に聞いた。今は寝ているけど、おかげでライアンとリーネは無事だよ。
だけど、そのせいであんたがっ…。」
震えた声でそう言いかけると、母さんは俺と村長の間に立ちはだかった。
「うちの子が村を滅ぼすですって!?アレクは馬鹿な権力者どもとは違います。この剣だって、ライアンとリーネを救う為に抜いたんですよ!」
圧倒的な威圧感で村長を問い詰める。
「『今のアレクは危険だから、わしらに任せておけ。リーネとライアンを守るために家から出るな』なんて…。いったいどこが危険なんですか!?
私がいない間に、この子を村から追い出すつもりじゃないでしょうねぇ!」
「無論、そのつもりじゃ。」
だけど、村長は迷わず言い切った。
『村から追い出す』その言葉に俺は固唾を呑んだ。
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