第一章 ミロダクトの村

14/18
前へ
/693ページ
次へ
村長に杖で殴られたので、俺はその痛みに頭を抱える。 「この紋章を持った者は皆やがて、剣に心を喰われてしまうのだぞ!!その身が朽ち果てるまで殺戮を繰り返す。つまり、お前がお前でなくなってしまうのだぞ!」 村長に怒鳴られたその言葉に、俺は事の重大さを思い知ったのだった。 そうか…だから村人達は俺から離れていたんだ。周りの村人の怯えたような目を見ると急に寂しさが込み上げる。 「つまり村長や村のみんなは、俺がみんなを皆殺しにして、村を滅ぼしてしまうって考えているんだな?」 確認を取ると、村長は頷いた。 だがその時だった。 「何を馬鹿な事を言っているの!!」 迫力のある母さんの声が村の広場に響いた。人垣をぐいぐいとかき分け、村長を突き飛ばして俺をきつく抱きしめる。 「あんた…何てことをしたんだい!?業火の剣を抜くなんて!」 俺を抱きしめたまま、母さんは俺を叱る。 すごい剣幕で迫られたため、俺は肩を竦ませた。 「ご、ごめんなさい。」 しかし、母さんはゆっくりと息を吐き出すと、俺の頭をなでる。 「謝らなくていい。アレク…あんたはいい子だよ。 話は二人に聞いた。今は寝ているけど、おかげでライアンとリーネは無事だよ。 だけど、そのせいであんたがっ…。」 震えた声でそう言いかけると、母さんは俺と村長の間に立ちはだかった。 「うちの子が村を滅ぼすですって!?アレクは馬鹿な権力者どもとは違います。この剣だって、ライアンとリーネを救う為に抜いたんですよ!」 圧倒的な威圧感で村長を問い詰める。 「『今のアレクは危険だから、わしらに任せておけ。リーネとライアンを守るために家から出るな』なんて…。いったいどこが危険なんですか!? 私がいない間に、この子を村から追い出すつもりじゃないでしょうねぇ!」 「無論、そのつもりじゃ。」 だけど、村長は迷わず言い切った。 『村から追い出す』その言葉に俺は固唾を呑んだ。
/693ページ

最初のコメントを投稿しよう!

994人が本棚に入れています
本棚に追加