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「村長命令じゃ!勝手にお前が止めるでない!」
すぐさま村長に怒鳴られて、母さんはそれ以上何も言わなかった。
「…わかりました。ならせめて、少し待ってください。」
母さんは村長を睨みながら静かに告げると、家へと駆けて行き、
しばらくして戻ってくると、一着の服を俺に差し出した。
それは白いラインの入った鮮やかな赤のジャケットで、父さんが若いころに買って着れなかったものだ。
俺とライアンが正義のヒーロ―みたいと言いながら着ていたなぁ。
いざ着てみると、当時ぶかぶかだった上着はいつの間にかちょうどよくなっている。
「…おっきくなったね。」
母さんはしみじみと言うと再び俺を抱きしめた。
「アレク…あんたは私のかわいい息子なんだから、絶対に帰っておいで。」
あまりに真剣に、心を込めて言われたから、なんだかくすぐったいようなきもちになる。少し大げさな気もするけど、やっぱりそれだけ大変なんだろうな。
「…うん。」
でもやっぱり嬉しかったから素直に頷いた。
そうして俺は、剣だけを頼りに村を後にしたのだった。
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