第一章 ミロダクトの村

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「母さんひどいよ! せっかく作ったのに……」 床に落ちた木刀だったものを拾い集めながら、俺は母さんを見上げる。 そりゃあ、いっぱい隠し持ってはいるけど、今日はすごく上手くいっていたのに。 「私はあんたたちが心配だから言ってるの。わかってちょうだい」 母さんは優しい声音でそう言いながら、さっき木刀をへし折った手で俺達の頭を撫でた。 こうなってしまうと抗いようがない。 大切に思ってくれている事をひしひしと感じる。 ライアンはやっぱりむくれたままだったけど。母さんに頭を撫でられて、少し照れくさそうにしていた。 しかし、母さんは俺達が大人しくなったと見ると、 「それじゃ、さっさと畑を耕しておいで! ライアンも手伝うんだよ!」 「「ええーっ!」」 俺達のブーイングに耳を貸すことなく、母さんは俺に鍬を、ライアンにスコップを手渡した。 母さんは仁王立ちで腰に手を当てながら、庭の畑を指差した。 「働かざる者、食うべからず!! ほら、リーネはもう草引きやってるんだから、行った行った!」 そう言いながら、俺とライアンを強引に家から追い出した。 玄関から外にでると、妹のリーネがプチプチと草をしゃがんだ状態で抜いていた。小さな背中をこちらに向けたまま、黙々とお手伝いをしている。 「リーネ、えらいなぁ」 俺が感心したようにつぶやくと、リーネはすぐさま振り向いた。 「お兄ちゃん達が遅いんじゃない!早くしないと日が暮れちゃうよ」 眉間にしわを寄せながらむくれる様はライアンとそっくりだけど、迫力はリーネの方が勝っている気もする。 末っ子ながらまじめなリーネは、鳶色の髪を動きやすいように束ねており、こめかみからにじむ汗が、彼女の懸命さを物語っていた。 そして、まだ小さな指を畑に向け、俺たちに指示を出す。 「ほら、この辺の草はもう抜いたから、後は耕してよね!」 ……まだ8歳の妹に指図される、16歳の俺ってなんなんだろう。 少々いたたまれない感じもするが、仕方なく作業にとりかかることにした。 リーネにさぼっていたと告げ口されては、本当に晩御飯抜きになりかねない。 俺は鍬を持ち上げて下すという動きを、何度も何度も繰り返したのだった。
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