第一章 ミロダクトの村

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「うぐっ!? 」 おまけにリーネが力いっぱい首にしがみつくから、一瞬気が遠くなった。 だが、微かにライアンの手の中に無数の黒い粒粒を見る事が出来た。 まさか……これ全部ダンゴ虫? 黒く小さな何十匹ものむしが無数の足をもぞもぞさせながら動き回っている。 おまけにアクセントとして、ピンク色のミミズや、てかてかと緑色に光るカナブンも含まれている。 うん。これは気持ち悪い。一匹や二匹なら全然平気だが、量が尋常じゃない。 「……逃がしてきて」 半ばひきつった顔で俺が言うと、ライアンはにやけながらますます虫たちを近づけてきた。 「ちぇー、せっかく捕まえてきたのに」 「頼むから」 さすがにこの量の虫を相手にできない俺は、思わず顔をそむける。 リーネにいたっては、俺の首をしめたまま、プルプルと震えていた。 「じゃあさ、逃がすかわりに祠に連れて行ってよ!」 「え?」 ライアンは目をキラキラさせながら俺を見た。 ライアンが言った祠とは、村の外れにある洞窟の中のドームのような場所で、祭りの時以外は立ち入り禁止になっているものだ。おまけに、洞窟の中に入るには『仕掛け』を解かなければならない。 そのおかげで、村人と帝国からの神官やシスター以外でこの祠に入った者は誰一人としていない。 さらに、その周辺には魔物が出るから、俺達子供は祭りの時でさえも祠に行くことは許されないんだ。 俺もまだ中へは入ったことがない。 だけど剣の腕試しをするために俺は夜にこっそり家を抜け出して、祠の周辺を探索していたのだった。 まさか、ライアンにばれているとは思わなかったけど。 「ねえ、俺も連れて行ってよ! じゃないと、これ全部まき散らすからな!」 目の前に大量のダンゴ虫を突きつけられる。 虫は苦手じゃないけど、虫まみれになるのは嫌なのでしぶしぶ了解することにした。 「仕方ないなぁ……」 俺がため息をつくように言うと、ライアンは両手を上にあげ、バンザイをするように飛び上がった。 「やったあっ!!」 だがその瞬間、見事にダンゴ虫が空へとぶちまけられる。 「ライアンのバカぁーーーーっ!!」 その後、リーネがいじけていたのは仕方ないと思う。
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