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こうして日が沈み、闇夜に月が昇った後、
俺たちは母さんが寝たことを確認し、(父さんは出稼ぎ)村人がみな寝静まっただろうと思い、こっそりと家を抜け出したのだった。
暗闇の中、月明かりだけを頼りに村を横切る。微かな虫の声と、木々のざわめきだけが耳にこだまする。
「なんか、わくわくするな!」
その、夜の静寂を打ち破るように、ライアンが棒切れを片手にぶんぶんと振り回す。
「静かに! 母さんにばれたらただじゃ済まないんだからな!」
俺が言うと、ライアンは珍しく素直にわかったと頷いて見せた。
……なんだか心配になってきた。
リーネもなぜかついて行くと言い張り、今は俺の左手を握っている。
二人と無事に家に帰れるように、俺はベルトに差した木刀を装備しなおしたのだった。
やがて山道に差し掛かり、暗い山道を三人が無言で歩く。
両手をライアンとリーネに握られた俺は、二人がこけないように気を付けて進んだ。
やがて開けた場所に出ると、二人から歓声が漏れた。三日月から白い光が優しく降り注ぎ、夜空に浮かぶたくさんの星は、散りばめられた宝石のように煌めいていた。
感慨に浸っていたその時、背後の草むらが音を立てる。
「誰だっ!」
俺は木刀を構えて振り向くが、そこには誰もいなかった。
何事もなくてよかったとほっとするのと同時に、ライアンとリーネにいいところを見せられなかったとがっかりした気分にもなった。
「なあ、あの中に入ってみようよ!」
そんな時、ライアンが祠を指差して言ったのだった。
「あそこは祭りの時以外立ち入り禁止だろ? おまけに子供は入っちゃダメって言われてるし」
俺が渋っているのにも関わらず、ライアンは俺の手をぐいぐいと引っ張ってゆく。
「もう子供じゃないやい!! 兄ちゃんは子供なのかよ!」
そう言われてしまうと、そのまま帰ってしまってはただの情けない兄になってしまう気がしたので、
「違うよ。なら連れて行くけど、はぐれるなよ」
少しやけになりながら、俺は祠の入り口に立ったのだった。
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