お前に拒否権はない

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「……お前、そんなところで何をしているんだ?」 あたしの真後ろで二つの足音が止まり、背中に視線が痛いほど突き刺さる。このまま黙っていたら、きっと怖いことになる気がする……。だって、この二人はあの戦闘班の人だもの。ここは大人しく振り向いて言った方が早く帰れそう、ということで振り返ったのだけど、こんなに近くで戦闘班の人を見るのは初めてだから緊張する! 「えっと、少し考え事をしていました」 「そうか。……それならいいが、こんなところで考え事をするのはあまり感心しないぞ?自分の持ち場に戻ってから、ゆっくりと考える方が効率はいいはずだ」 ……あれ?意外とまともな答えが返ってきた。大きな茶色の耳をピクピクと動かしながら諭したこの人こそが、戦闘班の班長であるユスティーさん。 前班長だった祖父の後を継いで班長になったそうだけど、特に不満があるというような噂は聞いたことがないので、かなり優秀な班長さんなんだと思う。その代わり、かなり頑固で戦闘狂なところがある人だと聞いていたけど、そんな風に言われている人だとは全く思えない……。 「そ、そうですよね……。これから、自分の持ち場に戻ってから考えることにします」 「うむ、そうしろ」 思っていたよりも簡単に開放された気がする。難癖付けられるんじゃないかって思っていただけに少し拍子抜けだけど、あたしとしてはこれでよかったとしか言えない。……というか、戦闘班の人であっても戦っていない時はそんなに酷い人じゃないんだ。なんというか、少しだけ戦闘班のイメージが変わったかも。 一礼して踵を返そうとすると、今度はフランさんがあたしを呼び止めた。たしかフランさんは『夢魔』っていう種族で、今は男の姿をしているけど、何かの衝撃が加わると女の姿になるらしい。 女の姿のフランさんを見たことがないわけじゃないんだけど、その瞬間を見たわけじゃないからそのことは未だに信じられないでいる。そんなフランさんは、これぞ戦闘班の人間という雰囲気の人だって噂だけど、それは真実なんだろうな……ってひしひしと感じてる。 「お前って、対人班の奴だろ?見たことねぇ顔だし」 「そ、それが……何か?」 「だったら、あの糞ヒーローに伝えとけ!二度とあんな電話してくんなってな!!」
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